佐藤浩市・荒井萌
あらすじ: 刑事の勝浦には娘と妻がいるが、過去の事件のトラウマが原因で別居、離婚の危機に瀕していた。娘が両親を仲直りさせようと旅行を計画、勝浦も休暇を申請し、娘へのプレゼントを購入していた。
そんなとき、小学生の姉妹が刺殺される事件が発生し、捜査線上に18歳の少年が浮上する。勝浦と同僚の三島が上司の坂本から命じられたのは、事件の容疑者家族の保護であった。勝浦は休暇申請を反故にされ、渋々この任務に着く。その頃、容疑者の少年の自宅には、大勢の取材陣や野次馬が押し寄せ、騒然としていた。坂本、勝浦、三島が現場に到着したとき、ついに少年は逮捕・連行される。残された家族は、混乱の中、離婚・再婚の手続きをして姓を変え、別々の場所へと保護され、事情聴取を受けることになる。中学生である妹の沙織には就学義務の免除がなされ、勝浦と三島に保護され車で家を脱出する。沙織に向けて容赦なく焚かれるフラッシュ。「一生追いかけてくる」という言葉の意味を、このとき沙織はまだ理解できていなかった。
勝浦と三島は、執拗に追ってくる報道車をようやく振り切って、用意されたホテルに到着する。しかし沙織の事情聴取を始める間もなく居場所をマスコミにつきとめられ、再び車を走らせることになる。人手不足のために、三島は容疑者宅に呼び戻されて家宅捜索に加わることを命じられ、行くあてのなくなった勝浦はしかたなく沙織を自分のアパートに連れてくる。
携帯電話を 家に忘れてきたという沙織のために勝浦が容疑者宅に戻ると、家宅捜索でごったがえす中で、容疑者の母は茫然としていた。沙織の携帯を見つけた勝浦が戻ろう とした時、母がトイレから出てこないことに捜査員が気付いた。ドアをこじ開けると、母は家族写真を手に、中で自殺を図っていた。勝浦が必死に蘇生させようとしたが、もはや息を吹き返すことはなかった。沙織は混乱の中で、母をも失うことになったのである。
アパートに戻った勝浦は、母の自殺を沙織にどう伝えるか迷う。精神科医の 尾上のアドバイスに従い、彼女の家に移動してから伝えようとしたが、沙織はボーイフレンドの達郎からの電話で先に事実を知り、ショックを受ける。さらに は、記者の梅本も、尾上の自宅を突きとめ、「犯罪者の家族は迫害されて当然」と勝浦に迫る。過去の事件の際に名の挙がった勝浦を、梅本は覚えていたのであ る。何も語らない容疑者の代わりに沙織から供述を得て、自分の出世の材料にしようと考えた坂本は、引き続きの保護を勝浦に命じるのだった。そしてその頃、 ネット上では「容疑者とその家族を糾弾せよ」という掛け声のもと、個人情報を得て関係者をさらし者にしようとする動きが活発化していた。
行く当ての尽きた勝浦は、東京を出ると、家族と共に宿泊するはずだった西伊豆のペンションへとたどり着く。ペンション経営者の本庄夫婦は、勝浦の手 が震えるトラウマの原因となった事件の、被害者家族であった。子どもを守れなかった勝浦に「警察を恨んでも、あなたを恨んではいない」とほほ笑んで見せる 本庄夫婦。しかし沙織が犯罪者家族であることを知り、自分の子供の事件とダブらせた本庄は、複雑な思いを勝浦にぶつける。
ネット上はいわゆる祭り状態で、掲示板に 容疑者や沙織の名前、写真、住所が公開されただけでなく、勝浦の家族にまで危険が及んでいた。さらには隠れ家のペンションの住所まで公開された結果、ペン ションの窓に投石を受ける。ペンションのことを教えたのは、沙織本人だった。なぜこんなことをするのかと戸惑う勝浦と、「刑事さんも困ればいいんだ!」と 叫ぶ沙織。本庄は「悲しみをどこにぶつけていいかわからないから、目の前の勝浦さんにぶつけたんですよ」と勝浦に語る。
夜になると、住所を見た達郎がペンションにやってきた。この時ようやく沙織は笑顔を見せ、久しぶりにくつろいだ様子を見せる。しかし勝浦たちの目を盗んで沙織をペンションから連れ出した達郎は、沙織をネット投稿者たちに売り渡していたのだった。
達郎に裏切られたことを知り愕然とする沙織。そこに機材に手を出され逆上したネット投稿者たちが押し寄せる。彼らの暴行から沙織を庇って負傷した勝浦に、沙織は事件当日に見たことを話し始めるのだった。
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